珈琲記

敬愛するコーヒー研究家、井上誠氏の著書より題を借り、私もここに、私が愛したコーヒーを記そうと思う。

Chapter17. ブラウンカラーに思いを寄せて

■ぶつぶつ、ぶつぶつと呟けば

しばらく放っておいた間に、このブログを紹介してくれた方がいたらしく、いや成程これは放っておいてはいかんと筆をとった次第である。

 

取り上げてくれた方のブログには、曰くこのような言及をされていた。

コーヒー豆を焙煎する休日も楽しいものです。 - ネガティブ方向にポジティブ!

>歴史を紐解きながら数あるコレクションの写真を眺めていると、美術館で解説員の話を聞きながら絵を楽しむような感覚になります。

>優雅なブログだな、と私は感じました。

(id:uenokoeda 様、ご紹介下さりありがとうございます。)

 

……なるほど、コーヒーの話をし始めると四方から殴り合いが始まるので、敢えて避けてコーヒーカップについてばかり話していたのだが、それはそれで「コーヒーカップのブログ」と思われてしまうらしい。

などと思って自分の過去の数少ない投稿を見てみれば、当然というか、ほぼほぼコーヒーカップの話ばかりである。

 

ではたまには、……。

いや、ここはいつも通り、コーヒーカップの話をしよう。

 

■古き佳き色合い

 昭和の日本の喫茶店といえば、大抵は「日本の器」か「西洋の器」のどちらかに傾倒していた。

片一方では「有田の三右衛門(柿右衛門窯/今右衛門窯/源右衛門窯)」なんかが神聖視されていた。

そしてもう片一方で人気だったのが、その当時深煎りのデミタスや、少量の濃いコーヒーなんかが好まれていた頃、深い木目調のカウンターに添え置かれるロイヤル・コペンハーゲンのブラウンカラーだった、らしい。

 

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 ・RoyalCopenHagen Blown Rose - 当時の喫茶店の定番中の定番だ。

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 ・RoyalCopenHagen Blown Iris - Irisとは菖蒲(アヤメ)のこと。

 

この美しいブラウンと、気品のあるくすんだ金彩は、老若男女問わず珈琲を愛する日本人に好まれた器だった。

そして、今も一部のコーヒーカップ愛好者のあこがれであり、古き佳き珈琲を愛する我々のひとつ大切な物語の一片なのだ。

 

■ハンドペイントに見る、器のありかた

突然だが、世の中には「器といえばハンドペイント!転写は悪!許さんぞ!」などと声を大にして喚き散らす殿方、奥方がいらっしゃる。

私はそれぞれの器に、意味と意義があって佳しと考える人間なので、転写などにはまったく抵抗はないのだが、今日は敢えてハンドペイントについて少し考えてみようと思う。

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 ・美しい茶色のバラ。豪華ながらも邪魔しない金彩の葉をつけている。

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 ・反対側。柄の入り方から、この器が右手で持たれるべきとわかる。

 

ハンドペイントとは、当然であるがなめらかにカーブを描くこの器に、筆描きで絵付けが行われているという意味であり、絵付けを行う人がいるということだ。

器の柄が工業化や近代化によって人の手を(文字通り)離れていくまで、器とは人の絵付けとともにあった。(というか、誤解のないように書き記しておくと、今でもまだ人が人の手でペイントをしている窯も多い。コペンハーゲンも然り、例えばヘレンドやアウガルテンなんかもそうだ)

 

故にその花は描いた人間によって当然表情が異なるし、同じ描き手でも1つとして全き同じものは存在しない、ということで、ハンドペイントの器を求めるということは、自分の気に入った表情の器との出会いの場を得るということでもあるのだ。

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 ・こちらはハンドペイントの菖蒲。ブラウンの濃淡と、アクセントの紅が美しい

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 ・この菖蒲は、力強くも繊細な濃淡が感じられる

 

力強く描かれた印象の深い花や、今にも消え入りそうな鳥や虫……。

同じテーマで描かれた器の柄でも、選び始めるとなかなかこれが決まらない。

そんな中で、自分の感性にピッタリきた器があれば儲けものだし、背筋に電撃が走れば一生に一度あるかどうかの幸福だ。

 

……と、ハンドペイントの器というのはかくのごとく、いわば究極の自己満足であり、自己表現である。

そしてそれがコーヒーという液体のみならず、食器という文化として歩んできた焼き物の一つの個性だ。

 

ハンドペイントの器を至高とする殿方・奥方各位は、この崇高なエゴイズムの虜であるか、または単に「価値が高そう」などと考える程度の思考力しか有していないか、の二択だろう。

 

■ブラウンローズに口付けて

暗い店内で、柔らかなかおりに誘われ、静かにカップの縁に口をつける。

薔薇の棘が刺さったような気がしてちくりと痛むのは唇ではなく、きっと珈琲を飲み込んだ後の胸の奥だろう。

 

Hank MobleyのRecado Bossa NovaなんかをBGMにして、今宵は思い出の中のあの子へ、セピア色ともとれぬブラウンカラーのバラを届けに行くのも、悪くないのかもしれない。

 

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Chapter16. 神の門

■太陽の雄の子牛

紀元前は18世紀、神の門と名を冠した都市が存在したという。

ひろくユーフラテスの川を跨ぎ繁栄したとされるその都市は、「バビロン」といった。

 

古代メソポタミアの神話に、「マルドゥク」という男神が描かれている。

マルドゥク木星を守護する神であり、太陽の神であり、また呪術に祀られる神であり、そのほかにもさまざまなもの・ことにまつわる神であった。

その容姿も多様であり、ゆえに禍々しいといわれている。

 

マルドゥクは「バビロン」という都市の神とされ、彼への信仰で平和と豊穣を得るとされた。

 

■平和の象徴

私が好きなWedgwoodは、器の柄を描く際に何かテーマを決めないと気が済まないらしく、それは100年前も、50年前も、30年前もそうだし、現代もそうらしい。

 

Wedgwoodの「バビロン」は1970年代から80年代に作られたが、その特徴的な色合いとエキゾチックな雰囲気で、日本で大人気のうちに廃盤となった。

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 ・ Wedgwood Babylon - ターコイズカラーと翠色が美しいこの器は、大変な人気であった。

 

インターネットの台頭により、廃盤品が流通しやすくなった現在でも在庫はなかなか出てこない。

 

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 ・鳥の顔が間抜け。

 

バビロンの鳥は平和の象徴とされた。

この器に平和の願掛けをするのも一興、日本の八百万の神マルドゥクが含まれているとは思えないが、そこはさしたる問題ではない。

 

■オチはない

なかなか手に入らない器なので、入手報告というだけだったのだが、ただ書くだけだと面白くないので、器の名前の由来をおさらいした次第だ。

 

この器で深煎りのコーヒーを飲みながら、かつて栄華を極めたというメソポタミアの都市に思いを馳せる――太陽の神には申し訳ないが、そんな夜もあっていいだろう。

 

なお、呪術の供物にはしないよう、くれぐれも注意したい。

 

 

Chapter15.アルミニアの面影

ロイヤルコペンハーゲン史に思いを馳せて

 皆が思い浮かべる北欧の食器といえば、まずおそらくは出てくるロイヤルコペンハーゲン。この窯は現在も洋食器のなかで強い人気を誇るブランド窯のひとつで、控えめで素朴な王冠のかわいらしいロゴが特徴だ。

 王冠(ロイヤル)というと、やれロイヤルドルトンだ、ロイヤルウースターだ、ロイヤルクラウンダービーだと、いろいろとあって混乱してしまう人もいるらしいし、私も実際最初期はそうだった。

 さて、このロイヤルコペンハーゲンだが、有名な話だと例えば同じデンマークで切磋琢磨したこちらもブランド窯「ビングオーグレンダール」を買収統合した、なんて話は意外と有名。

 ビングオーグレンダールというと、かわいらしいカモメが描かれた淡い水色の器が有名で(シーガル)、しかしこの器は買収統合されたのちにコペンハーゲンのバックスタンプで再生産して輸出するなどしたものだから、日本なんかだとみんなコペンハーゲンの器だと思っていたりするものだ。

 あとはロイヤルコペンハーゲンのブルーが、伊万里焼の染付からくるものだとか、そういったありふれた話はみんな知っているもの。

 

 しかし、果たしてこちらの話を知る人はなぜかあまりいないのであった。

 今日はその「こちらの話」を少し書き記しておこうと思う。

 

■知られざる窯

 ロイヤルコペンハーゲンの器の中で、白磁器ではない、くすんだクリーム色の陶磁器の類がある。

 FAJANCE(ファイアンス)と呼ばれるその製品は、ロイヤルコペンハーゲンのバックスタンプが付くFAJANCEであれば、FAJANCEとバックスタンプに書かれている。

 さて、このFAJANCEと呼ばれる製品は、もとはというとアルミニアというデンマークの窯から始まっている。

 1862年に設立され、陶磁器をして豊かな色彩を持たせたFAJANCEで有名な窯だった。しかし国内外で人気を博すのはもう少し後の1950年代からで、時代を若干先取りしてしまったのだった。

 このFAJANCE製品は、焼成後の冷却で陶土と釉薬の収縮率が違うためにおこる貫入が趣とされ、ひとつとして同じものはないとして買い集める愛好家(コレクター)が続出したのである。

 

 ……さて。

 意外と知られていていないのが、これだ。

 1884年、アルミニア窯「が」当時のロイヤルコペンハーゲン窯を買収。王室御用達のコペンハーゲンを買収したのち、アルミニアは自らの製陶工場の名前をコペンハーゲンとして名称を統一した。

 つまり、ロイヤルコペンハーゲンは、FAJANCEの製陶をして生きたアルミニアにより永らえたのであって、しかしここがみな知らないのだ。

 

■アルミニアの鬱金

 その中でも有名な作品といえば、これだ。

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 Pic.1 - ロイヤルコペンハーゲン: トランクェーバー(左がS Size、右がM Size)

 

 和名で「鬱金香」というと、チューリップのことだ。

 これは当時、デンマークの植民地であった南インドにて、クリスチャン・ヨアヒムというデザイナーが見た一輪のチューリップが描かれている。

 そのチューリップは黙して語らないが、その逸話からさまざまな推測をしてこの器を語る人が多い逸品だ。

 

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 Pic. 2,3 - 一つ一つが手描き、その器でのみ咲く永遠の花だ。

 

 ちなみにこの花を描いたデザイナー、クリスチャン・ヨアヒムは、アルミニア時代からのコペンハーゲンを成功へと導いたデザイナーの一人として言われている。

 

 さて、実はこのトランクェーバーを「アルミニアの」器として出したのはなぜかというと、理由としては二つだ。

 一点目は、これから書く内容の補足を行うにあたって、私の持つわずかなコーヒーカップの在庫では、この器でしか語れなかったから。

 そして、もう一点目が本題。

 

■歴史の証人

 ロイヤルコペンハーゲンのFAJANCE製品は、実は1969年のものまではアルミニア窯のバックスタンプがついていた。

 今市場に出回っているFAJANCE製品は当然のこと、アンティークを探そうとしてもなかなか1969年以前のものがないので、これもあまり知る人がいない。

 

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 Pic. 4,5 - アルミニア窯のバックスタンプ。Aの文字に見える。ちなみにM Sizeのもの

 

 上記の写真のバックスタンプがまさにそうだ。

 1969年から先、これが以下のようになる。

 

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 Pic. 6,7 - 1969年以降のバックスタンプ。S Sizeのもの。FAJANCEの文字が見える

 

 私の手持ちにそれぞれ時代を跨いだ2つのトランクェーバーがあったので、このような記事を書く気になったが、こうして現物を目の当たりにすると自分の知らぬ歴史を追体験している気分になるものだ。

 

■アルミニア(Aluminia)の面影

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 Pic. 8 - 左が1969年以降、右が1969年以前。これがどういうことか、記事を読んだからもうわかるはず

 

 いつの時代もコーヒーはそこにあって、その液体が着飾るドレスがあった。

 もちろん我々が生きている今現在だって、我々の生活やライフスタイルに即したコーヒーと、彩を与えるためのコーヒーカップがある。

 その営みは30年、50年、100年、200年前と変わらない、コーヒーを愛する我々と、我々に寄り添う黒い液体のためにあるのだった。

 

 私はそんなことを思いながら、見たこともないデンマークの風とアルミニアの窯の暖かさに口をつける。

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Chapter14.時代をこえて

■はじめに

ブログを完全に横着し、いつものように更新が行われなくなってからしばらくの時間が過ぎたが、僕はなんとかこうして生きている。

 

気がつくと自身の職業が変わっていたりして、それでもコーヒーに生き、器越しに様々なもの・ことに思いを馳せて、大事なところは変わらずにいる。

 

さて、今日は僕が器を集めるきっかけになったスタイル、WedgwoodのWhitehallで、新しく手に入ったものを紹介しようと思って再び筆をとった。

 

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Whitehall PowderBlue (W3993)

 

■その器は

WedgwoodのWhitehallといえば、もう僕にあって話を聞いた人ならばいやというほど聞かされたであろうが、それはもう大変人気のスタイルだった。

もともとは皇室献上品として作られ、今はなき繁栄の象徴たるイギリスはホワイトホール宮殿が、このデザインパターンのモチーフである。

大半が火事で失われてしまったが、今でも貯蔵庫などの本当に一部の建造物のみ残っているらしい。

宮殿に巻き付いた蔦をモチーフに繁栄の象徴として作られたデザインは、シンプルながらその高貴さを感じさせ、華やかだが装飾華美ではない美しさに、心を奪われる。

 

さて、この器だが、実は数少ないこのブログの記事で少しだけ写真が出てきたりしている。

 ・Chapter.8 - 2014~ゆくとし、くるとし - 珈琲記

 ・Chapter.13 - 華と彩 - 珈琲記

僕はもうこの器を持っていて、しかも1客のみならず、今回購入したものを除いても5客所持している。

よくこんな話を友人や知人にすると、「なんで同じ器を何客も買うの?」などと怪訝な声で訊かれるが、僕からするとどれも同じものではない。

1客1客すべてに違う顔がある、それが器の良さであり、奥深さだと僕は感じていて、ここにその一端を記しておきたかったのだ。

 

■時代をこえて

この器はただでさえ客数が少なく、その中でもリーシェイプと呼ばれるこの形のものはめったにお目にかかれない。

それゆえに選り好みできず、巡り合わせに身を任せるしかないのが現状といったところだろう。

ではここで紹介するWhitehall PowderBlueはどんな1客なのか、細かく見ていこう。

 

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バックスタンプは「白抜きのポートランドの壺」、手描のW3993 Kが目につく

 

バックスタンプを見るとよくわかるのだが、この器はウェッジウッドのカップ製造ラインが機械化される前、すなわち1950年より前の器であることが分かる。

Whitehallのシリーズ自体は1944年から、テーブルウェアとしてその少数が市場に出回ったので、それを考えると1944-1950年までのものと考えるのが妥当だろう。

上記写真では確認しづらいが、製造が機械化される前のものなので、ソーサーに3点の支柱痕が見られたりと非常に味わいが深い。

また採番の「K」の文字が、これが片割れ同士の組み合わせでなく、完全な1ピースとしてのC/Sであることを裏付けてくれている。これは非常に希少価値が高い。

 

現在所持している、製造ライン機械化後の同パターンと比べてみると、差は一目瞭然だった。

 

■時代の足跡

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同じWhitehall PowderBlue(W3993)でも、明らかに雰囲気が違うのが見て取れる

 

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カップの塗りと色彩の比較。上が1962年以降のもの、下が1950年以前のもの

 

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ソーサーの塗りと色彩の比較。上が1962年以降のもの、下が1950年以前のもの

 

上記の写真を見てもらえば、素人目にも別物であることは明らかだろう。

例えば今回買ったものは、パウダー彩が荒く色が若干濃い。

また特筆して差が出ているのは金彩の塗りと色合いだ。1950年以前のものは色が赤色系に近く、鈍く輝く。そして塗りは(特にソーサーで確認できるが)点描を用いるなど、その技巧を惜しみなく堪能できる。

一方で新しいものは全体的にシンプルにまとまっていて、1950年以前のものと比べると若干主張で押し負けているようにも見える。しかしその奥ゆかしさは、コーヒーを必要とするシーンでわれわれに安心感を齎してくれるだろう。

 

■器は液体のドレス

コーヒーという液体は、その偽りのない純真な姿をわれわれの前に晒してくれる。淑やかでいて優美な女性を思わせる液体は、しかしそれが注がれる器によって、飲む人に全く違った印象を与えることもある。

見栄えというのはわれわれ人間の営みの中でも重要とされている。こぎれいに、人に不快感を与えないようにという最低限の気遣いは、然してコーヒーではより繊細さを必要とされる。

シンデレラがガラスの靴と美しいドレスがなければ永遠に灰かぶりであったように、コーヒーにもその液体にあった美しいドレスが必要だ。

そうしてはじめて、私たちは一瞬で泡沫に消えゆく女性と、忘れられないひと時を堪能できるのだから。

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その美しいドレスに身を包んで、琥珀色の液体は輝く

 

■終わりに(近況の報告)

本当に久々に更新したかと思いきや、長々と自分の趣味趣向だけ語っているのだからどうしようもない。しかしそれこそこのブログの意義であるが……。

しばらく更新していなかったので、近況だけまとめておこうと思う。

 

1) 転職した

目下目標のためにお金を稼ぐため転職をした。職業プログラマとして、日々ぎりぎりな生活をしている。ストレスから前よりコーヒーを欲するようになった。

 

2)器が増えた

おいおいこのブログで紹介していこうと思う。

 

3)彼女のハンドメイド趣味

彼女がハンドメイドで色々作っているのだけれど、上記Whitehallのパターンでループタイを作ってくれるなどした。

Twitter上で結構反響をいただき、商売としては考えていないけれど、近い将来器の柄をモチーフにした手芸品の制作と販売をやりたいなぁ、なんていう話をしている。

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こんな感じ。器はWhitehall PowderRuby(W3994) 贔屓目抜きに、ほしい人いると思う

 

 

以上、また明日もいいコーヒーライフを。

Chapter.13 - 華と彩

先日、Twitterのフォロワーである @minton_music 氏に、彼が行きつけの喫茶店だという店の豆をぜひ飲んで感想がほしい!と言われ、実際に豆を送ってくれたので、今回はそのコーヒーについて、レビューとまで呼べないような個人的感想を述べていこうと思う。

 

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今回いただいたのはこちら。

つくば市の自家焙煎の喫茶店(と、どうやらワインもやっているらしい)、coffeeroaster Frestaplus+さんのブレンドコーヒー。

私はお店を存じ上げなかったけれど、かなりおいしいと氏から推されていたもので、ブレンドも同氏のお気に入りらしい「ハワイアン・エクスタシー」というものであった。

 

名前からしてハワイ・コナは入っているだろうな、と思いつついただいた。

このブレンドは中煎り程度のものであって、封を開くと、その名の通り南国の鮮やかな雰囲気を運んでくれるような、名前負けしない香りがする。

この香りは鼻腔をくすぐるといったレベルのものではなく、いち早く、体にまとわりつくかのような錯覚を伴わせるほど強烈な香りであって、少しもすれば部屋中にうっすらと充満する。

煎り方、香りからしてもおそらくはスペシャルティ・コーヒーと呼ばれる類の豆を使っているのではないかと推測できるが、その丁寧なのは、煎りがしっかりと豆の芯までなされていることであって、抽出時のエグい後味なんかは全く出てこない。

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(背景が汚いのはご愛嬌)

本格的なテイスティングとして、抽出はカリタのナイスカット・ミルを用いて4番で挽き、片面起毛のフランネルを用いた丸型ネルでこれを抽出した。

抽出に際し、中煎りの香りが強い豆であることを考慮して、味を濃く出すことに注力せず、ネルの中性的で柔和な液体を抽出できる特性を活かしながらも、香味ともに中庸な液体を抽出することを心がけた。

抽出は150㏄を25gで行い、抽出器具はユキワM-5ポットで、湯の温度はKalitaの温度計で92度と94度の間を指していた。

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さて、では実際の液体についての私の個人的な感想であるが、まず味について。

味は先味に苦みがしっかりとくる。しかしストロングなものではなくて、舌触りの柔らかな苦みであって、後味には喉に残らない酸をすっきりと飲み込める。

中間味、ボディについてだが、ここではこの豆の洗練された酸味を、柔らかな苦みをアクセントにして、十二分に堪能できるだろう。

特に15分ほどしてゆっくり飲んでいると、この酸は濃厚になり顔を出してきて、先味もまったく変わったものに変容する。もし可能であれば、この液体は時間をかけてゆっくりと飲みたいものだ。

しかし香りは時間が経っても褪せることがなく、豆の封を切った時の華やかな南洋の香りをそのままにしていて、このコーヒーを静かに飲んでいくと、まるで名にある南洋の島々の、日の出から夜更けまでを飲み込んでいるような錯覚に陥る。

そしてこの感覚は非常に甘美なものであって、なるほど香味ともに液体まで名前負けのしない、エクスタシーを感じるコーヒーであった。

 

 

といったところで、今回の個人的な感想はここまでとして、結局そのあと自作のケーキとともに楽しんだりもした。

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改めて @minton_music 氏には、すばらしい珈琲に出会う機会をいただいたことに感謝の意を表するとともに、今後とも佳いコーヒーライフに恵まれることを願うこととする。

 

ごちそうさまでした。

 

 

今回のお店はこちら。

自家焙煎珈琲豆とワインの専門店

 coffeeroaster Frestaplus+(フレスタプラス)

〒305-0044 茨城県つくば市並木4-4-2 並木ショッピングセンター1F 105

℡ 029-879-5856

公式サイト: Fresta Plus Coffee Roaster

 

Chapter.12 - 遺す

時間というものは有限で、また過れば二度として戻ってくるものではない。

ゆえに何らかの方法で記し、あるいは遺すことで、その一瞬を可能な限り引き延ばすのである。

今回もコーヒーというより、カメラの話になりそうだ。

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- 私の勤める某店にて。Nikon F3P / Ai NIKKOR 50mm f/1.4 (f4 , 1/60)

 

Chapter.10にて実家から譲り受けたカメラの話をしたが、4月の末にもう1台、フィルムカメラを購入した。

それは私が実家のNikon EL2をもらう前にそのケースを探しにカメラ屋を渡り歩いていた時、一目ぼれしたカメラであった。

祖父から譲り受けたNikon EL2を触ってしばらく、ついに我慢ができなくなって手を出したソレは、Nikon F3Pというカメラだった。

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- Nikon F3P / Ai NIKKOR 50mm f/1.4(現在はネックストラップが別の物に変わっている)

 

そのカメラは調べてみると、Nikon F以下数字一桁の、所謂ハイ・エンドユーザ向けのモデルのなかで、最も愛されたものであったらしい。シリーズ後継機が出続けた後も20年間、後継機が生産終了になっても作り続けていたとのことであった。

そのなかでも特にP(Press - 報道用モデルらしい)の名を冠した本機は、初出を1983年とし、どうやら一般販売はされていない、プロ用報道カメラマン向けのモデルだった、とのことであった。

詳細は当ブログの趣旨に背くので(最早手遅れか?)省くけれども、その無骨で、写真を撮るために生まれてきた機能美は、時代を超えてデジタルのカメラが一般的になった現在でもなお、手に取るものに高揚感と、写真を撮ることの本質を教えてくれるようだ。

 

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- 某バーにて。JIM BEAMのロック(本ブログの趣旨ではないが……)

 Nikon F3P / Ai NIKKOR 50mm f/1.4 (f2.8 , 1/30)

 

全くもって時代を間違えているわけでもなく、未だにその魂と精神は生きている。

購入後このカメラを握る度、そっと、しかし力強く、このカメラは語りかけてくれて、答えてくれるのであった。

 

私はこういった、なにかしらについての本質に繋がるものが好きなのだろう。

ここ最近になって、ようやっと気づいた節があった。

 

写真と、写真を撮るための機械の本質を教えてくれるフィルムカメラというものは、奇しくも昨今の簡易抽出ブームの波を受けてもなお流されず、その液体の本質を常に問いただす、シンプルなひとつの抽出方式に似通っている気さえする(ちょっと強引すぎるか?)。

 

これからもこのブログに投稿する写真は、本機F3Pないし、祖父から譲り受けたEL2にて、遺したいと、そう強く決意している。

 

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- Nikon F3P / AF NIKKOR 55mm f/2.8  &  Nikon EL2 / Ai NIKKOR 50mm f/1.4

 

 

Chapter.11 - 調和

2015年4月10日、ひとつの喫茶店が静かに幕を下ろした。

僅か数年の営業で、更にようやっとこれからという時であった。

その1杯はすっきりと洗練されていて、柔らかく調和のとれた液体が喉を、そして疲れてささくれた心をも癒してくれる。

 

きの珈琲。

それが知る人ぞ知る、赤坂にあった安らぎの場であった。

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きの珈琲 - フレンチブレンド (650円)

- 飲み口柔らかく、それでいてボディの厚いすっきりとしたコーヒー。

器はウェッジウッドをはじめ、コペンハーゲンやヘレンドなどの西洋磁器に加え、ノリタケなどの日本の白磁の器もあった。

 

4月10日。その店の最後となる日に伺うと、いつもは静かな日が落ちてすぐの時間だったのだが、その日だけは普段と違って、常連の客などが席につき、それぞれが最後の時間を惜しみながらも、しかし慈しむようにして過ごしていた。

 

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きの珈琲店主 - 木野寛之氏(写真は若干ぶれているので申し訳ない)

- もともとは名古屋の有名な洋菓子店でパティシエであって、その後もパティシエとしていくつかの店に就いたが、喫茶店を志し北海道は札幌を中心にチェーンを展開している「宮越屋珈琲」の東京店舗に転職し、勤務。店長などを経験し、その後2012年に赤坂に「きの珈琲」を開店。

 

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きの珈琲 - ベイクドチーズケーキ(ケーキ各500円・セットで950円)

- パティシエである彼のつくる、喫茶店らしくもより輪をかけて洗練されたケーキは、彼の点てる珈琲ととてもマッチしていた。

 

見事に香味の調和した珈琲と、上品でいて、だが温かみのある、やはり珈琲に特に調和した茶菓子。静かで若干のクラシックさを湛えた店内。

そのシチュエーションと、貴重な一杯の液体を失うことになったのは、大変残念でならない。

 

しかし店主である木野氏は、「今回は仕方がなく閉店としたが、数年後には新しい店を構えたい」と、いつもの朗らかな笑顔とともに、変わらぬ調子で語った。

今後地方で、数年計画で新店舗を持ちたいとする彼に、また彼が点てる至上の珈琲にさらに磨きがかかるであろうことに、いち珈琲好きとして、あるいはいち「きの珈琲」ファンとして、個人的に尊敬の念を寄せる木野氏に、大いに期待するところである。

 

 

きの珈琲 - 東京都港区赤坂4-3-9 赤坂藤マンション1F

定休日: 日曜隔週

営業時間: 10:00 ~ 22:00

最寄駅: 地下鉄赤坂駅赤坂見附駅

2015年 4月10日 閉店

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