珈琲記

敬愛するコーヒー研究家、井上誠氏の著書より題を借り、私もここに、私が愛したコーヒーを記そうと思う。

Chapter.11 - 調和

2015年4月10日、ひとつの喫茶店が静かに幕を下ろした。

僅か数年の営業で、更にようやっとこれからという時であった。

その1杯はすっきりと洗練されていて、柔らかく調和のとれた液体が喉を、そして疲れてささくれた心をも癒してくれる。

 

きの珈琲。

それが知る人ぞ知る、赤坂にあった安らぎの場であった。

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きの珈琲 - フレンチブレンド (650円)

- 飲み口柔らかく、それでいてボディの厚いすっきりとしたコーヒー。

器はウェッジウッドをはじめ、コペンハーゲンやヘレンドなどの西洋磁器に加え、ノリタケなどの日本の白磁の器もあった。

 

4月10日。その店の最後となる日に伺うと、いつもは静かな日が落ちてすぐの時間だったのだが、その日だけは普段と違って、常連の客などが席につき、それぞれが最後の時間を惜しみながらも、しかし慈しむようにして過ごしていた。

 

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きの珈琲店主 - 木野寛之氏(写真は若干ぶれているので申し訳ない)

- もともとは名古屋の有名な洋菓子店でパティシエであって、その後もパティシエとしていくつかの店に就いたが、喫茶店を志し北海道は札幌を中心にチェーンを展開している「宮越屋珈琲」の東京店舗に転職し、勤務。店長などを経験し、その後2012年に赤坂に「きの珈琲」を開店。

 

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きの珈琲 - ベイクドチーズケーキ(ケーキ各500円・セットで950円)

- パティシエである彼のつくる、喫茶店らしくもより輪をかけて洗練されたケーキは、彼の点てる珈琲ととてもマッチしていた。

 

見事に香味の調和した珈琲と、上品でいて、だが温かみのある、やはり珈琲に特に調和した茶菓子。静かで若干のクラシックさを湛えた店内。

そのシチュエーションと、貴重な一杯の液体を失うことになったのは、大変残念でならない。

 

しかし店主である木野氏は、「今回は仕方がなく閉店としたが、数年後には新しい店を構えたい」と、いつもの朗らかな笑顔とともに、変わらぬ調子で語った。

今後地方で、数年計画で新店舗を持ちたいとする彼に、また彼が点てる至上の珈琲にさらに磨きがかかるであろうことに、いち珈琲好きとして、あるいはいち「きの珈琲」ファンとして、個人的に尊敬の念を寄せる木野氏に、大いに期待するところである。

 

 

きの珈琲 - 東京都港区赤坂4-3-9 赤坂藤マンション1F

定休日: 日曜隔週

営業時間: 10:00 ~ 22:00

最寄駅: 地下鉄赤坂駅赤坂見附駅

2015年 4月10日 閉店

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