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珈琲記

敬愛するコーヒー研究家、井上誠氏の著書より題を借り、私もここに、私が愛したコーヒーを記そうと思う。

Chapter14.時代をこえて

■はじめに

ブログを完全に横着し、いつものように更新が行われなくなってからしばらくの時間が過ぎたが、僕はなんとかこうして生きている。

 

気がつくと自身の職業が変わっていたりして、それでもコーヒーに生き、器越しに様々なもの・ことに思いを馳せて、大事なところは変わらずにいる。

 

さて、今日は僕が器を集めるきっかけになったスタイル、WedgwoodのWhitehallで、新しく手に入ったものを紹介しようと思って再び筆をとった。

 

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Whitehall PowderBlue (W3993)

 

■その器は

WedgwoodのWhitehallといえば、もう僕にあって話を聞いた人ならばいやというほど聞かされたであろうが、それはもう大変人気のスタイルだった。

もともとは皇室献上品として作られ、今はなき繁栄の象徴たるイギリスはホワイトホール宮殿が、このデザインパターンのモチーフである。

大半が火事で失われてしまったが、今でも貯蔵庫などの本当に一部の建造物のみ残っているらしい。

宮殿に巻き付いた蔦をモチーフに繁栄の象徴として作られたデザインは、シンプルながらその高貴さを感じさせ、華やかだが装飾華美ではない美しさに、心を奪われる。

 

さて、この器だが、実は数少ないこのブログの記事で少しだけ写真が出てきたりしている。

 ・Chapter.8 - 2014~ゆくとし、くるとし - 珈琲記

 ・Chapter.13 - 華と彩 - 珈琲記

僕はもうこの器を持っていて、しかも1客のみならず、今回購入したものを除いても5客所持している。

よくこんな話を友人や知人にすると、「なんで同じ器を何客も買うの?」などと怪訝な声で訊かれるが、僕からするとどれも同じものではない。

1客1客すべてに違う顔がある、それが器の良さであり、奥深さだと僕は感じていて、ここにその一端を記しておきたかったのだ。

 

■時代をこえて

この器はただでさえ客数が少なく、その中でもリーシェイプと呼ばれるこの形のものはめったにお目にかかれない。

それゆえに選り好みできず、巡り合わせに身を任せるしかないのが現状といったところだろう。

ではここで紹介するWhitehall PowderBlueはどんな1客なのか、細かく見ていこう。

 

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バックスタンプは「白抜きのポートランドの壺」、手描のW3993 Kが目につく

 

バックスタンプを見るとよくわかるのだが、この器はウェッジウッドのカップ製造ラインが機械化される前、すなわち1950年より前の器であることが分かる。

Whitehallのシリーズ自体は1944年から、テーブルウェアとしてその少数が市場に出回ったので、それを考えると1944-1950年までのものと考えるのが妥当だろう。

上記写真では確認しづらいが、製造が機械化される前のものなので、ソーサーに3点の支柱痕が見られたりと非常に味わいが深い。

また採番の「K」の文字が、これが片割れ同士の組み合わせでなく、完全な1ピースとしてのC/Sであることを裏付けてくれている。これは非常に希少価値が高い。

 

現在所持している、製造ライン機械化後の同パターンと比べてみると、差は一目瞭然だった。

 

■時代の足跡

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同じWhitehall PowderBlue(W3993)でも、明らかに雰囲気が違うのが見て取れる

 

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カップの塗りと色彩の比較。上が1962年以降のもの、下が1950年以前のもの

 

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ソーサーの塗りと色彩の比較。上が1962年以降のもの、下が1950年以前のもの

 

上記の写真を見てもらえば、素人目にも別物であることは明らかだろう。

例えば今回買ったものは、パウダー彩が荒く色が若干濃い。

また特筆して差が出ているのは金彩の塗りと色合いだ。1950年以前のものは色が赤色系に近く、鈍く輝く。そして塗りは(特にソーサーで確認できるが)点描を用いるなど、その技巧を惜しみなく堪能できる。

一方で新しいものは全体的にシンプルにまとまっていて、1950年以前のものと比べると若干主張で押し負けているようにも見える。しかしその奥ゆかしさは、コーヒーを必要とするシーンでわれわれに安心感を齎してくれるだろう。

 

■器は液体のドレス

コーヒーという液体は、その偽りのない純真な姿をわれわれの前に晒してくれる。淑やかでいて優美な女性を思わせる液体は、しかしそれが注がれる器によって、飲む人に全く違った印象を与えることもある。

見栄えというのはわれわれ人間の営みの中でも重要とされている。こぎれいに、人に不快感を与えないようにという最低限の気遣いは、然してコーヒーではより繊細さを必要とされる。

シンデレラがガラスの靴と美しいドレスがなければ永遠に灰かぶりであったように、コーヒーにもその液体にあった美しいドレスが必要だ。

そうしてはじめて、私たちは一瞬で泡沫に消えゆく女性と、忘れられないひと時を堪能できるのだから。

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その美しいドレスに身を包んで、琥珀色の液体は輝く

 

■終わりに(近況の報告)

本当に久々に更新したかと思いきや、長々と自分の趣味趣向だけ語っているのだからどうしようもない。しかしそれこそこのブログの意義であるが……。

しばらく更新していなかったので、近況だけまとめておこうと思う。

 

1) 転職した

目下目標のためにお金を稼ぐため転職をした。職業プログラマとして、日々ぎりぎりな生活をしている。ストレスから前よりコーヒーを欲するようになった。

 

2)器が増えた

おいおいこのブログで紹介していこうと思う。

 

3)彼女のハンドメイド趣味

彼女がハンドメイドで色々作っているのだけれど、上記Whitehallのパターンでループタイを作ってくれるなどした。

Twitter上で結構反響をいただき、商売としては考えていないけれど、近い将来器の柄をモチーフにした手芸品の制作と販売をやりたいなぁ、なんていう話をしている。

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こんな感じ。器はWhitehall PowderRuby(W3994) 贔屓目抜きに、ほしい人いると思う

 

 

以上、また明日もいいコーヒーライフを。